下山開始、そして事故が!

山頂での光景をカメラで捉え、しっかりと目に焼き付けた一行は満足しながら稜線を下りはじめた13時45分!
以下は、今回遭遇した山スキー事故の模様です。

このページをご覧いただいている方々に、冬山での事故について、冬山での危険性について、装備について、事故が起きた時はどうするか、
「この点は良かった、あれはもっとこうすれば・・・」等、少しでも参考にしていただきたい、との思いから、その顛末を客観的に報告させていただくことにしました。
ご理解ください。


【山頂から30mほど下ったところだった、私達より少し先にスキーを履いて下りた単独の女性が横たわっていたのである。
私はその光景に唖然とした、その女性の左足首はあらぬ方向へ曲がっていたのだ。「骨折だっ」

koyamさんが携帯で110番通報、電波状況が悪くなかなか話しが見えない?。何回か電話しているうちにkoyamさんの携帯が電池切れとなる。countrymanさんの携帯も間もなく電池切れ。稜線上のカリカリ斜面、しかも吹く風も冷たく、なんとか少し下りたところまで移動することにする。
後から登ってきた6名ほどのグループに再度警察への連絡をお願いして 、koyamさんが持参していた太目のベルト(長さが調節出来る)を輪にしたものをザックからとりだし、女性を背負い(背負う瞬間に女性がかなりの痛みを訴える)、koyamさんと女性のザックをcountrymanさんと私が担ぎ女性のスキーはおばさんが持って移動を開始した。

おばさんを先頭にゆっくりと歩きはじめる。稜線から下りてちょっと休めそうなポイントまで進むことにする。クラストした雪面を慎重に下る、なかなかスキー靴でのキックもきかない。私とおばさんは少し先にポイント1690m付近に移動しザックを下ろして、再びストックを持ってクラスト斜面へ戻りkoyamさんを誘導する。
雪面がキックを跳ね返す、緊張する瞬間ではあったが何故か怖さは無い!懸命に蹴りちょっとしたステップを作りながらなんとかポイントへ到着。

休む間も無くkoyamさんの指示でcountrymanさんと一緒に女性の足をストックとテープで固定する!koyamさんはスコップで周りの雪を掘りテントを張るスペースを作り、全員でテントを設営。寒さで震えている女性を私のツエルトにくるみkoyamさんのテントに収容する!


一段落したところで最後に残っていた私の携帯で再度警察へ連絡、以降は私が警察とのやりとり窓口となる。
とりあえず現在の状況を説明、警察の話しでは道の防災ヘリが向かって来るとのこと! ふとあたりを見回すとガスがたちこめ見通しが悪くなっている。

「ヘリが下りれなかったらビバーク可能か?」
と警察に問われる。「えっ?」koyamさんと顔を見合わせて絶句「装備はそろっているから最悪の事態なら!可能だ」と答えると、「もちろんそれはヘリが下りられなくて、下からすぐに救助隊を向かわせることができない最悪の事態を想定しての話し」と聞いてちょっとホッとする。
視界が悪くなっていたこともあり、私はGPSで確認して現在の緯度経度を連絡した。

私は最悪の事態(ビバーク)を考えて、countrymanさんとおばさんに先に下山してもらう決心をした。遅くなって下山する場合にも身軽な(少ない)ほうが行動し易い。
何回も一緒に山スキーで登っていて、私には二人とも安全に下山できるという確信もあったからである。
二人はガスっている斜面を下りはじめた。私はおばさんに声をかけた「慎重に、ゆっくり、そうそうゆっくり1回づつのターンで良いんだよ」。そんな私の心配をよそに二人は慎重に且つ確実に下っていった。やがてガスもきれて2段目に二人の滑る姿を確認した。

段々と寒くなってきてkoyamさんとテントの中に入る。ストーブをたいてkoyamさん提供の熱々のコーヒーを飲む。彼女はいたって元気でひと安心。
やがてヘリの音が聞こえてくる。運良くガスも晴れてきた。ラッキーだなあと思った。

警察からもどんどんと携帯に連絡が入る。「ヘリに収容し終わったら連絡が欲しい。下山したら白銀荘で警察が待機しているので状況を説明して欲しい」等、しかし、「ごくろうさまです」とか「申し訳ありませんが」とか全般的に大変丁寧な応対であった。

テントから飛び出す、koyamさんと二人で手を振って場所を知らせる。ヘリがホバーリングしだすと、あたりはまるでブリザード状態である。離れてはいたがテントを抑えながら待機。
ヘリから隊員が一名下りてくるが、クラスト斜面におりてしまい、再トライ! 2名の隊員が降り立つ。タンカに彼女をのせて、テント、ツエルトを撤収して私達はその場から少し下り、離れて見守る。】

後でわかったことですが、
ヘリが近づけない場合に備えて、凌雲閣から雪上車が到着。三段山クラブ、釧路労山、その他の登山者の方々が申し出てくれて、雪上車にレスキューソリを積み、森林限界まで行って、そこから1時間ほど徒歩で登り救助をするため待機していたそうです。最悪ビバークは避けられていたでしょう。
関係諸氏の方々にこの場を借りて、心よりお礼申しあげます。

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