黒岳山頂は一面ガスに包まれていて何も見えない。大勢の人達が寛いでいたが、皆その視線の先は白いガスの奥であった。「晴れて来るのかしら~」「さっきの青空は何だったんだい」私はちょっと愚痴を言いながらザックを下した。「しばらく待ってみる?」「そうだな~もう少し待とうか。まだ十分時間もあるし~まあこのままでも雲ノ平の紅葉が見られれば良いからね」。そう言えば・・・紅葉の写真撮影に夢中になってあまり養分補給をしていない。ミネラルドリンクを飲み、軽食を頬張る。 「あっ、ほらっ、あそこ、、、明るくなって来たよ!」おばさんが叫ぶ。「良いぞ~もう少しガンバレ、ガンバレ」何を頑張るのかは知らないが私も叫ぶ。徐々にガスが途切れて来た・・・「おおおっ、凄いぞ」「わぁ~綺麗!」「こりゃあ凄い」山頂に歓声があがった。一気に展望が広がって一大スペクタクル的?な状況がそこに展開している訳であり~烏帽子岳東斜面を覆う真紅の紅葉と、切れ落ちる沢と白い雪渓のコントラスト・・・そして赤岳、白雲岳、北海岳方面の山肌を紅葉が彩る。「素晴らしい~~~」私は何度も何度もシャッターを押した。 |
. 山頂付近は一面ガスに覆われていた |
徐々にガスが途切れてきて~ |
やがて一気に展望が広がり~ |
烏帽子岳東斜面の紅葉と、切れ落ちる沢と~白い雪渓のコントラストが美しい |
山肌を彩る紅葉に歓声があがった |
「そろそろ行こうか」私達は黒岳石室に向かって下り始めた。時折日射しを感じながらもすぐに雲に覆われて・・・「流れる雲と紅葉と」そんな状態が続いていた。ただほとんど風が無いので快適だ。 眼下に石室を囲む紅葉が見えて来て、雲が途切れると凌雲岳や北鎮岳も姿を見せる。おばさんは立ち止まり~「あっ、あそこだよ」「可愛いね~」と近くにいた女性や子供たちとシマリスの撮影に夢中だ。この時期には冬眠に備えて採餌に忙しいシマリス、ちょうどハイマツの中に潜り込んでその実を採っていた。「撮れた?」「うん、私も撮れたわっ」。そんなやりとりも又楽しそうだ。 石室周辺は見事な紅葉で彩られていた。 |
眼下に黒岳石室、雲ノ平方面を見る |
雲が途切れて・・・凌雲岳や北鎮岳も姿を現し~ |
黒岳石室周辺の紅葉 奥は桂月岳 |
黒岳石室も大勢の人達で賑わっていた。すぐ隣の桂月岳に向かって行く人達も多い。石室で小休止して~いよいよ雲ノ平に向かって歩き始めた。石室である程度登山者も分配されるので(石室までの人、桂月岳に登る人、北海岳方面へ向かう人等)、やや静かな道程となる。それでも、視線の先には必ず人影を見る。 さてその紅葉だが・・・ちょうど見頃を迎えて素晴らしい色合いであった。ウラジロナナカマド(葉は全く傷んでいない)やチングルマ、クロマメノキの真っ赤な紅葉が一面を覆う。網膜が赤く染まりそうである。そんな中に白いチングルマの果穂が点々と散りばめられ~ |
秋彩に染まる雲ノ平を行く |
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