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迂回路を経て登山道に戻り少し登ると3合目、急斜面の登りが待ち構えていた。先日降った雪はまだ登山道の所々に残っていた。たっぷりと湿気を含んだ柔らかい雪が足元をすくう。「歩きづらいわね〜」おばさんもちょっと難儀していた。

高度が上がるにつれて登山道の雪は途切れることなく続くようになった。28日に登った人の踏み跡があった、「助かるわよね〜これがあると無いでは大違い」、「そうだね、感謝感謝!!」「山頂まで行けるのかしら?」「問題は山頂直下の急斜面だね、夏でもロープの補助をうけたりしながら登っているからね〜」、「無理しないで行きましょう」「そうそう、紅葉を見て〜そしてあの迫力のある山頂部を見上げることが出来れば十分さ」

木々の切れ間から長万部岳が姿を見せ始める、やはりすっかり雪化粧である。「綺麗ね〜」、長万部岳は山頂からも見ることは出来るが、私はこの尾根を歩いている時に、木々の間から見るのが好きである。木々と微妙なバランスを持った光景が演出されるからである。

5合目を過ぎるころから少し絞まった雪になって来た。「これなら歩きやすいね」柔らかい雪に足をとられる事が無くなった。この頃から何となく山頂を意識し始めていたのかもしれない。528m標高点付近まで来ると山頂部が見えて来る。「いよいよだな」私を気を引き締めた。

登り

長万部岳
長万部岳

登り


528m標高点付近からの山頂部

528m標高点からは少し下って行く。目の前には山頂部の迫力ある全容が私達の前に立ちはだかる。標高800mにも満たない山だが、何度見てもその迫力に押しつぶされそうになる。急斜面に刻まれた見上げる登山道には積もった雪の白いトレースが続いていた。

「行けるかしら」「とにかくもう少し行ってみようよ、途中でダメだと思ったら引き返せば良いんだから」「そうね、行きましょう」、おばさんは歩き始めた。

黒松内岳
黒松内岳山頂部が立ちはだかる

急斜面
急斜面に刻まれた登山道を見上げる

登り

登り

コルから少し登っていよいよ急斜面の始まりだ。「交代するよ」私は先頭に立って登り始めた。この斜面に積もった雪がどんな状態なのか確かめたかった。幸いなことに気温が低く無いせいもあるのだろうが、絞まった雪に覆われた斜面は凍ってはいなかった。しっかりと足元を確認しながら登ることが出来そうだ。
雪に埋もれていたロープを探り出し、しっかりと固定されていることを確認してゆっくりと登って行く。「これなら大丈夫だな」、ちょっと休憩していた私を交わしておばさんが登って行った。

登り

ロープ

もう戻ることは無かった、雪を踏みしめ急斜面を登りきると青空が待っていた。「やったな・・・」そう思いながらおばさんの後に続く。11時10分、黒松内岳の山頂に立った。登り始めてから2時間5分だった。

さあ〜

もうすぐ〜

山頂だ

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