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5合目を過ぎる頃から周辺に明るさが感じられ始めた。「そろそろ陽射しを受けるのかな?」いつもなら雲海上に出るぞと期待するところだが、強い陽射しが心配だった。

6合目前後から私達の歩みは一段とスローペース。登山道は急斜面にジグを切りながら延びている。とにかく延々と登り続ける苦しさを久々に味わうことになる。おばさんのペースが上がらなくなってきた。「休もう、ゆっくりと」7合目の手前のスペースでザックを下した。
「無理かもね、私は大丈夫だから一人で行って来て」ちょっと残念そうにおばさんが言う。ここで途中撤退するとしても、既に標高約1400mを超えている。火口壁まで残り400mほどの行程差を行くのか、それとも下山を開始するのか、判断を求められるところだった。

どちらにせよとにかく水分補給、塩分補給だ。そういえばここまでは小休止ばかりだった。ここはじっくり休んで体力の回復具合を確かめる必要がありそうだ。持ってきたオニギリを頬張る、食欲はお互いに十分あった。「うまいね~やっぱり山のおにぎりは!」ゴクゴクとミネラル飲料を飲み干す。



ゆっくりと休んで立ち上がり、そのまままた歩き始めた。とりあえず途中撤退と言う選択肢は保留したことになる。上空には青空が広がり始めた。雰囲気としてはどんどん明るくなって来る。気分的にもやや上向き加減。7合目を過ぎて8合目へと向かう、「すごいわね」登山道脇を埋め尽くすコガネギクが美しい。


上空に青空が広がり始め




登山道脇に咲くコガネギクが美しい


体力的にも少しずつ余裕が出て来て~8合目を過ぎて登山道が斜面を横切りながら進むようになると、いよいよ足元のザレ地に花々が目立ち始めた。視界はぐんぐん広がって来て、広がる雲海はほぼアイレベル、山を楽しむべく環境が整ってきた。いつしかおばさんもすっかりペースを回復していた。どうやらシャリバテだったようだ。
「ウラジロタデが綺麗よ、、、ヤマハハコも凄い」次から次へと足元に咲く花々を愛でながらの歩みとなるのだ。まだ咲き残っていたチシマフウロ、そして今が盛りとイワギキョウが咲き揃う。


登山道は斜面を横切りながら進むようになる


視界が広がって来て


雲海はほぼアイレベル


足取りも軽くなって来て


ウラジロタデ


ウラジロタデの雌花と果実


まだ咲き残っていたチシマフウロ


イワギキョウが咲き揃い


やがて避難小屋との分岐となり9合目、ひと登りで視界がぐんと開けて真狩ピークを前方に見ながら登って行くことになる。ここまで来るともう火口壁までは指呼の距離だ。咲く花々を見ながらゆっくりゆっくりと進んで行く。雲海を背景に佇む避難小屋が美しい。周辺を歩く登山者の姿が豆粒のようになって見えていた。




前方に真狩ピークを見て


火口壁に向かって進んで行く


雲海を背景に佇む避難小屋が美しい


イワベンケイの果実



クルマユリ

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