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岩場にイワヒゲが咲き始めていた。ミネズオウがやっとぽつぽつと顔を出し始めている。「やっぱり今年は開花が遅れているのかなぁ」と思いつつカメラにおさめる。

と、先行するおばさんが立ち止まった。すぐ目の前の登山道にカメラを向けている。レンズの先を見ると比較的大きな鳥が・・・「あっ、ギンザンマシコ!」 私は息を飲んだ。登山道に下りていたのである。一旦飛び去ったかに見えたのだが~すぐ先の低木の枝にとまった。更にまた地面に下りて~エゾノツガザクラの花芽?を啄み始めた。やっとこちらの気配に気づいたのか飛び上がって~今度はハイマツの上で囀り始めた。ピュルピュルピュル・・・美しい鳴き声が響き渡る。野鳥図鑑を見ると「雌も稀にさえずることがある」と書いてあるのだが~その貴重な場面に出会えたのかもしれない。

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イワヒゲ
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ミネズオウ
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ギンザンマシコ♀(おばさん撮影)
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いよいよ最初の大きな雪渓に足を踏み出す。ここはまさに「雪渓トラバース」の状況だ。しっかりとステップが刻まれていて歩くには程よい雪質だった。それでも滑落する危険とは隣り合わせ、慎重に一歩一歩進んで行く。二つ目の雪渓は斜度がややきつく距離も少し長い。前方に美瑛岳を見ながらゆっくりゆっくり~やっとそのトラバースを終えてほっと一息だ。やがて目の前には勝瑛ノ滝の下に流れ込む深くえぐれた涸れ沢が現れる。まだほぼ雪で埋まっていたが、十分に注意が必要なところだ。

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慎重に雪渓をトラバース

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二つ目の大きな雪渓

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深くえぐれた涸れ沢はまだ雪で埋まっていた

この時期この山域で咲く花々、その一番手はエゾノツガザクラだろうか。あちこちで群落を作り咲き始めたところと言った印象だ。一年ぶりのこの花との出会いはやはり心が躍る。もう一つがエゾコザクラだろう。これも咲き始めたばかりの印象ではあるものの、登山道脇をその愛らしい姿で彩る。いづれもこれからの気象状況の推移にもよるのだろうが~どんな輝きを見せてくれるのか注目したいところではある。

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エゾノツガザクラ
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エゾノツガザクラ(おばさん撮影)

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エゾコザクラ
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涸れ沢を越えてポンピ沢へ向かって下って行く。ほどなくやや冷たい風が吹き始めて~前方に見る美瑛岳の山裾にガスが流れ込んできていた。登山道脇の彩りもまだまだと言った感じで~「そろそろ戻ろうか」と阿吽の呼吸で帰路となる。もう一度慎重に雪渓をトラバース、ほっとしながら登山道脇で休んでいた東京から来られたというご夫妻と山談義。更に花々を愛でながらゆっくりゆっくりと戻って行く。エゾコザクラの咲く登山道脇のスペースで腰を下して大休止。静けさも満喫しながらミネラル飲料を飲み干す。

「あらぁ~久しぶり~」先を進むおばさんの声が聞こえた。見るとそこにはなつかしいお二人の姿があった。山友達のkakutご夫妻である。お互いの近況報告や、「あの人は今」的な?話しが弾む。普段は特段行き来していないが、山友達の心意気には変わらぬうれしさがある。「エゾコザクラが咲き始めていましたよ~、それから・・・」そんな情報もお伝えして束の間の出会いにピリオド。

眼下の雲海はどんどん広がり始め~やがてそれは雲上の人となる状況になるわけで~先行するおばさんの姿を見ながらカメラにおさめる。そんな私の好きな光景も避難小屋分岐が近づくにつれて濃いガスに包まれることで終わりを告げた。11時45分、望岳台の駐車場にたどり着く。装備を解いて札幌への帰路についた。

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美瑛岳の山裾に雲が流れ込み始めた

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急な雪渓を戻り始める

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眼下に広がる雲海が美しい
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コースタイム(含休憩時間)
望岳台 05:45  十勝岳避難小屋分岐 07:00  ポンピ沢手前 08:50  望岳台 11:45
累計時間 6時間  歩行距離 9.2km

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