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「なにかあっちが開けて来ているようですね」nakaさんが指差す。ややルートを左にとりながら高度を上げて行く。小さな沢(窪み)を越えて藪漕ぎをひとつ、一気に視界が広がる。「あぁ~ここですよね~」目の前には山頂に至る急斜面が立ちはだかっていた。「休憩しましょう」ザックを下して小休止、「落石注意ですよね」「あとはマムシとか」お互いに注意事項を確認し合いながら水分補給である。

「あっ、あそこにピンクの花が見えるけど」おばさんが上部を指差す。kusaさんの双眼鏡を借りて見るのだが、ハッキリそうだとも言えない。この「そうだ」とは今回の狙いの花、エゾツツジだった。「ヤマツツジじゃ無いと思うよ」「エゾツツジかも」そうなると一気にテンションが上がる。この距離であれだけピンクの塊が見えるとしたら、素晴らしい群落に違いない。そんな期待が私達の足取りを速めた?いやいや慎重に一歩一歩「落石注意」と言いながら登って行くのだ。草付きとは言えガレ場、小さな砕石が転がっている。ちょっと間隔をとり小さくジグを切りながら登って行く。

足元にはエゾタカネニガナが咲いていた。蛇紋岩やかんらん岩帯に咲くキク科の植物で北海道固有種である。ハナニガナやタカネニガナに似ているが草丈や葉に違いがあるようだ。


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ガレ場の草付き急斜面を登って行く
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エゾタカネニガナ
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「わぁ~凄いよ」「綺麗~」「見事ですね~」歓声があがった。遠くに見えていたピンクの花は今回の狙いのエゾツツジの群落だったのである。ほぼ満開状態で咲き誇っていた。私はカメラのレンズを交換して、おもむろにファインダーを覗いた。「素晴らしい・・・」やや絶句気味?に呟きながらシャッターを押した。大雪山の小泉平周辺でもその時期にはエゾツツジの大群落を見ることが出来る。さすがにその規模にはかなわないものの、ここでは何か違った雰囲気での美しさを感じた。

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ピンクの花を目指して登って行く

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エゾツツジ
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頂上に向かってガスが漂う急斜面の登りが続く。多機能地図ソフトのカシミールでこの部分の断面図を見ると平均斜度で30度を超えていた。まるで壁にへばりつくように登ったり、小さな砕石に足をとられて「ら~く、ら~く」と叫ぶ。ふっとガスが途切れて来て青空も見え始めた。足元に咲くエゾツツジに囲まれながら、一歩一歩山頂に近づいて行く。

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ガスが流れる山頂直下

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ガスが途切れて青空が見えてきた

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エゾツツジに囲まれながら

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