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池周辺まで戻って、鳥見をするおばさんと別れて私は旭岳に向かうことにした。ここまで戻ると観光客の方々が多くなり一気に賑わいを感じることになる。池をポイントにしてシャッターチャンスを狙っている人達の姿も多い。鏡池の奥に見える当麻岳、安足間岳、まだ周囲を雪に囲まれた擂鉢(すりばち)池が美しい。姿見ノ池はまだ雪に覆われていたが、大勢の人達が寛いでいた。旭岳石室を横目に登山道に入って行く、午前10時40分。

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鏡池の奥に当麻岳、安足間岳方面を見る

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周囲を残雪で囲まれた擂鉢(すりばち)池が美しい

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エゾノツガザクラの奥に旭岳を見る

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姿見ノ池はまだ雪に覆われていた

姿見ノ池から山頂までは標高差約620m、距離にして約2kmである。足元に咲くジムカデやコメバツガザクラ、コケモモやクロウスゴ等の低木の花を楽しみながら登って行く。高度が上がるにつれて、忠実に尾根に沿って進む登山道は火山れきと火山灰に覆われ、ほとんど植物は見られなくなる。とにかくひたすら北海道最高峰のピークに向かって喘ぎながらの登りとなる。

ふっと立ち止まり、広がる展望を確認する。天人峡温泉から化雲岳方面に向かう尾根を目で追ってみる。長かった苦しかった山行がなつかしく思い出されるのだ。我に戻ってまた一歩踏み出そうと山頂方面を見ると・・・やや雲が広がり始めていた。


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ジムカデ

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コメバツガザクラ

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クロウスゴ

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コケモモ

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トムラウシ山方面

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山頂付近を雲が流れ始めた

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地獄谷を見下ろす

登るにつれて傾斜はどんどん増して来る。「どうしようか~山頂まで行こうか~それとも展望だけ確認して下ろうか~」自分ひとりだけだから、どんな選択肢も自由である。
鳥見をしているおばさんに連絡をしてみた。大勢の人達がいる池周辺なので心配は無いが、期待している鳥見が全く成果無しで退屈しているとすれば、ここで下山もヨシかなと思ったからである。おばさんの返答は明快だった「撮れたわよ~」と弾む声がかえって来た。しかも偶然知り合いの方々とも一緒出来たとのことである。

こうなると今後の私の進路は私次第だ。とりあえず、忠別岳と遠く石狩連峰がスッキリと見える地点まで登ろうと決めた。やっと7合目の標識を見て次の8合目までの長いこと・・・何度かザックを下して軽食を頬張り、またゆっくりと登って行く。望む展望をカメラにおさめる頃には、山頂付近は完全に雲に包まれていた。

「どうするんだ~」と自分に問いかける。多くの下山者とのすれ違い、私の後ろからも次から次へと登って来る人達。そんな流れに任せて私はついにガスの中に突入した。こうなるともうただ登るだけ、「こんにちは」と交わす言葉も力が入らない。気温も下がり始めていた。指先も冷たいほどである。登山道が回り込むように進んでニセ金庫岩。ここまで来ると山頂は近いのだが・・・さすがに裾合平方面を歩いてからの登りはきつかった。

12時30分、何も見えない旭岳山頂に立った。姿見ノ池から1時間50分であった。


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中央奥がトムラウシ山、右奥に十勝連峰

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左奥に石狩連峰 手前中央に忠別岳 右端にトムラウシ山

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石狩連峰をズーム 右端がニペソツ山

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眼下の裾野の雪渓模様が美しい

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高度が上がるにつれて視界が悪くなってきて

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ついにガスに包まれ・・・九合目付近にて

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ニセ金庫岩

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