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一気に雨足が強まってきた。「どうする?」、おばさんの声に私は躊躇することなく「止めよう、撤退だ」。頂上稜線の端を今回の私達の山頂にすることにした。それは~見たいと思っていた花々はカメラにおさめることが出来ていたし、何度も登っている山でもあるので、ピークに拘りは無かったからでもある。

雨は一段と強くなってきて、まるでゲリラ豪雨かと思わせるほどの大粒の雨が叩きつける。「気をつけろ、ゆっくり行け」急斜面の下りだ、登山道には雨水が流れ、張られた固定ロープも泥だらけ、慎重にならざるえない状況だ。一瞬雷鳴を聞いたような気がした。まるで泥だらけになりながらの感すらある下りとなった。先行していた単独の男性が下りて来た。「滑りますよね」そんな言葉を交わしながら道を譲る。

長い時間に感じたのだが、実際には10分ほどだろうか?急に雨が上がって上空から日射しを受け始めた。忽然と眼下の視界が広がって~暗い雲が稜線を勢いよく越えるように流れて行く。刻々と変化する光景の中に為すすべのない自分達の姿を感じた。


雨が止んで


眼下に勢いよく雲が流れ

雨は止んで陽射しが広がって来た、ひと安心である。そのままコルまで下りザックを下す。「ふ~~っ、凄かったね」「ドロドロよ」、登山靴も手袋も泥だらけだ。途中で登って来た方々にその模様を話したが、その頃にはもう山頂方面は晴れあがり、遠く支笏湖方面の山々が望まれるほどだった。かと言って~さすがにもう私達に登りかえす気力は無い。
登りではほぼ雲に隠れていた羊蹄山も姿を現し始めていた。何度も山頂方面を振り返りながらの帰路となったのである。


コルに向かって下って行く


遠く樽前山方面や白老三山が見えて


登りでは雲に隠れていた羊蹄山も見えて来た


振り返ると山頂方面はクッキリと晴れあがり

今回の山行で見られた花々の続きである。高山の草地に生えるエゾノホソバトリカブト、今回の見たかった花のひとつである。頂上稜線の奥にもっと咲いていたのかもしれないが、なんとかカメラにおさめることができた。この山域で初めて見たちょっと地味な花、ネバリタデ。一年草だが今回は運よく目に飛び込んで来た。もうひとつが「これ何だろう」と写した植物、帰宅してから図鑑やネットで調べて~ムカゴイラクサと言う結論をだしたのだがどうだろうか。ただ残念ながらムカゴは確認できていない。


エゾノホソバトリカブト




ネバリタデ


ムカゴイラクサ


何度も振り返りながら登山口に向かって戻って行く。「最後はやっぱりスミレよね」そう言いながらおばさんが指差す。春に咲くスミレが数は少ないものの見られるのだ。この時期はほとんど閉鎖花になっているのだが、まれに開放花となることがあるらしい。そんなオオタチツボスミレの「返り花」を愛おしむようにカメラを向けた。
11時55分、登山口に到着。泥だらけだった登山靴が意外と綺麗になっていてビックリしながら装備を解いた。



オオタチツボスミレの返り花




コースタイム(含休憩時間)
登山口 07:45  723mコル 08:55  頂上稜線 09:55  723mコル 10:45  登山口 11:55
【歩行距離 5.6km  延行動時間 4時間10分】

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