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723mコルで小休止、ザックを下して水分補給だ。「さぁ、これからだぞっ」そう自分に言い聞かせながら立ち上がる。いよいよ標高差約300mの急な登りに向かって一歩を踏み出した。もちろん最初は緩やかな登りで始まり、左に美しいダケカンバを見ながら徐々に斜度が増して来て・・・。「ここ滑るよ~」前夜来の降雨の影響だろうか、それでなくても急で足元が不安定な登山道が湿った土で一段と滑りやすい状態になっていたのである。固定ロープが何か所か設置されているが、新しくなっていて安心感が増していた。登りの時にはあまり使わなくても、下りの時にはその助けを借りることが多い登山道でもある。

「こんにちは」、先行していた単独の男性が下りて来た。「早いですね、もう頂上まで行って来たのですか」「はい、頂上からは羊蹄山は残念ながら見えませんでした。今日はとても滑りやすいので下りる時は気を付けて」「ありがとうございます」そんな言葉を交わしながらすれ違った。

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いよいよ急斜面に向かって進んで行く

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段々斜度が増して来る

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固定ロープがぶら下がる急斜面

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ミヤマアキノキリンソウ

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サラシナショウマ

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エゾカワラナデシコ

コルから1時間10分ほどで頂上への稜線に出た。ここから頂上までは一転してゆるやかな登山道となる。ヨツバヒヨドリやヤマハハコを愛でながらゆっくりゆっくりと登って行く。上空はやや雲が多いものの、青空も広がっていて陽射しを感じながらの心地良い稜線歩きが続く。

午前10時ちょうど、誰も居ない尻別岳の頂上に立った。登り始めてから2時間15分だった。正面に聳える羊蹄山は残念ながらその頂上が雲に包まれていた。札幌近郊の山々も霞んでいてハッキリとした輪郭が望めない。汗を拭い冷たいスポーツドリンクを飲み干して~軽食を頬張る。

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頂上稜線に出る

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ヨツバヒヨドリ

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ヤマハハコの群落

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ゆるやかな頂上稜線を行く

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羊蹄山の頂上は雲に包まれ

頂上滞在は15分程度、私達は下山を開始した。この頃から登って来る人達の列が続いた。「こんにちは」「どうぞ、ゆっくりで良いですよ」「ありがとうございます」狭くて急な登山道で譲り合いながらのすれ違いだ。「あっ、ここで休んでますから」「どうもありがとうございます」「滑りますよね~気を付けて」そんな言葉のやりとりが多くなる。固定ロープに助けを借りながら慎重に下って行く。とにかく滑るのだ。私も何度か転倒しそうになったので、首からぶら下げていたカメラはザックに仕舞い込んだ。

それでも咲く花々を見るとついカメラを向けたくなる。ザックを下してカメラを取り出してファインダーを覗く。高山型のエゾノホソバトリカブトはこの時期の尻別岳では魅力的な花である。茎は直立して上から順に花が咲き~その名の通りの細い葉が魅力的である。何度も立ち止まりながらの撮影で私達の足取りはいつも通りに遅々として進まない。

723mコルに下り立つ頃には青空は更に広がりを増して来て、容赦なく強い陽射しが降り注ぎ始めた。「暑いぞぅ~」汗を拭い冷たいスポーツドリンクを喉元に流し込む。「あっ、昆布岳よ」おばさんの前方には遠く昆布岳も見えて来た。やや霞んだ印象があるものの洞爺湖方面にも陽射しが感じられて・・・そんな光景を目にしながら~8月最後の山行も終わりを迎える事になった、12時ちょうど登山口へ。

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札幌近郊の山々が見えてきた

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右後方に昆布岳を見て

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洞爺湖方面をちょっとズームで

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エゾノホソバトリカブト
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クロバナヒキオコシ
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コースタイム(含休憩時間&花撮影時間)
登山口 07:45  723mコル 08:40  頂上 10:00-10:15  723mコル 11:00-11:20  登山口 12:00

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