北海道では連日30度を超える暑い日が続いていた。「大丈夫かしら」天気予報ではこの日も気温はグンと上昇するようだ。「でも標高が高いから幾分涼しいと思うよ」、そんな予想通りに早朝の十勝岳温泉駐車場は案外快適だった。午前4時過ぎにはもう登って行く人達の姿もあった。私達も装備を整えて~2017年7月14日午前5時10分登山口を出発した。目指すは十勝連峰の富良野岳である。 この山には毎年のように登っていたが、昨年は天気とスケジュールの都合で中止していた。「花の名山」である、今年こそはその花模様を見たいとの思いだった。登山口から安政火口まではなだらかな広い道が続く。距離にして約1.3kmほど~これが結構長い。火口見学の観光客の方々も歩く道なのだが歩きづらい部分も多いので注意が必要だ。 やがて前方に立ちはだかる大迫力の安政火口を見て、水量の少ないヌッカクシ富良野川を渡り対岸へ~。D尾根を斜めに登って行く事になる。上空は青空、時折吹く風は心地よい。 |
安政火口 |
川を渡って対岸へ |
D尾根を斜めに登って行く |
「そろそろよね・・・あっあった~咲いてるよ」いつもの道すがらにはアカモノが咲いていた。この山での山行ではいつも一番最初に注目する花である。マルバシモツケやエゾノマルバシモツケはちょうど見頃でとても綺麗だった。地味なアラシグサは本当に多い、主稜線下のなだらかな登山道脇ではあちこちで見ることが出来るから、品定め?をしながらカメラを向けても良いほどだ。 |
アカモノ |
ウラジロタデ |
マルバシモツケ |
エゾノマルバシモツケ |
ツマトリソウ |
アラシグサ |
D尾根を回り込むと富良野岳が前方に見えて~まだまだ遠い道のりを実感することになる。今回の行程について触れておくと、距離にして約5.2km、標高差は約640mである。先日登った札幌岳は距離にして約5.5km、標高差約850mだから単純に考えると札幌岳の方がハードと言うことになる。大きく違うのは富良野岳のスタート地点が既に標高1270mなのに対して、札幌岳は標高430mほどであることだ。つまり、富良野岳の山行はそれだけ標高の高い地点を歩くことになる。 沢地形を進んで行くとやがて上ホロ分岐、「わっ!!!」先行するおばさんが小さな声をあげた。「ギンザン!」そう言いながらカメラを構える、すぐ目の前だ~見事な紅色のギンザンマシコの雄が新芽を啄んでた。おばさんが懸命にシャッターを押す。近くの枝の間に雌の姿もあった。やっとこちらの存在に気付いたギンザンマシコのカップルは、ハイマツの奥にスーっと飛び去った。「近かったわ~っ」おばさんは興奮気味にその場に立ちすくんでいた。こんな出会いなどめったに無いことだろう。「これも山登りの醍醐味のひとつだよね」そい言いながら分岐でザックを下し水分補給だ。 |
右前方に富良野岳を見て |
上ホロ分岐へ |
ギンザンマシコ♂(おばさん撮影) |
ギンザンマシコ♀(おばさん撮影) |
ポツポツと咲き始めたヨツバシオガマ、この山域では初めて見たハクセンナズナ、オオバミゾホオズキが所々で群落をつくって咲いていた。モミジカラマツがちょうどいい感じ。深く切れ込んだ葉が特徴で、花もカラマツソウよりも小さいので容易に見分けがつくだろう。カラマツソウも綺麗だが私的な好みとしてはこちらに軍配を上げたい。 |
ヨツバシオガマ |
ハクセンナズナ |
オオバミゾホオヅキ |
モミジカラマツ |
上ホロ分岐を過ぎると次に三峰山沢へ向かって下って行く。前方に展開する深い沢がとても美しいところでもある。沢を渡ると次に長い階段が待ち受け、さらに進んでまだ一か所残っていた雪渓を渡った。三峰山と富良野岳を結ぶ主稜線の山腹のなだらかな道程が続くことになる。あちこちから野鳥の囀りが聞こえていた。遠くのナナカマドの上にノゴマの姿を見る。「わっ!」おばさんの前をギンザンマシコが横切るように飛んで行く。 |
三峰山沢に向かって下って行く |
階段を登り |
まだ雪渓が一か所あった |
前方に富良野岳を見て |
遠くのナナカマドの上で囀るノゴマ(おばさん撮影) |
やや湿った個所にエゾコザクラが群落をなして咲いていた。富良野岳の頂上への稜線上でも見る事が出来たが、ここで咲いている様子はとても瑞々しい印象を受けた。登山道脇のあちこちでオガラバナを見た。カエデ科の落葉樹なのだがその多さには驚いた。チシマノキンバイソウが綺麗に咲き始めていた。まだ蕾のものもあったし、これからもっと登山道脇を彩ることになるのだろう。 |
エゾコザクラ |
オガラバナ |
チシマノキンバイソウ |
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