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8合目が過ぎてしばらくするとやっと視界が開けて来た。「もうすぐガレ場だよ、それを登り切れば外輪山だから」私の言葉におばさんは頷きながらゆっくりと登って行く。やがてそのガレ場へ~浮石が多くおまけに細かい火山灰地に足元がすくわれる。「わっ、滑る!」「ゆっくり行け、慎重に!」そう言った私は思わず足をとられて苦笑い、「気を付けてよ!」とおばさんから注意を受ける。一旦ガレ場を抜けて登山道脇に咲くエゾオヤマリンドウやウメバチソウを見てほどなく9合目。「さあ、もう一息だ」私は9合目標識を見ながら息絶え絶えに叫んだ。

9合目を過ぎると再度ガレ場となり、そのまま急斜面を登り切って外輪山に飛び出す。「出たよ~」ほっとする瞬間である。

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やっと視界が開けて来て

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ガレ場の急斜面

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眼下には雲が漂っていた

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エゾオヤマリンドウはやや終盤

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まだ咲いていたウメバチソウ

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再度急なガレ場を登り

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コケモモの果実

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サマニヨモギ ウラジロタデ

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外輪山に飛び出す

外輪山に飛び出すと一気に視界が広がる。見下ろす大火口父釜は凄い迫力だ。火口壁の上を南へ進んで行く、すぐ先に三角点1892.7mがあり、そのさらに先200mが最高点(山頂)だ。山頂に立つ人影が見えて歓声も聞こえて来る。11時20分、ついに私達は羊蹄山の山頂に到着した。登り始めてから実に5時間半が経過していた。

大勢の人達が狭い山頂で記念写真を撮り合っていた。私はその合間をちょっとだけ借りて山頂標識をカメラにおさめた。山頂直下の喜茂別コース側でザックを下し大休止だ。「登れたね!」「ゆっくり登れば何とかなるもんだよ」私は辛かったひたすらの登りを振り返りながら感慨深げに呟いたのである。

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大火口の父釜を見下ろす
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右に山頂に立つ人影を見て

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山頂直下で休憩していると・・・濃いガスが流れて来て~あっと言う間に周囲を包み込む。山頂を見上げるともう誰も居ない。私達はザックを担ぎあげ山頂にタッチして~外輪山を戻り始めた。京極コース分岐をそのまま通過して子釜、母釜付近まで~外輪山散歩は心地良い。

真狩コースや比羅夫コースから登って来る人達と次から次へとすれ違う。今年の大雪山山行も含めて感じる事だが、最近は本当に山に登る若い人たちが増えたと思う。単独の若い女性も良く見かける。以前は中高年の登山ブーム等と言われたものだが、今やしっかりと若い人達にも根付いてきているのかもしれない。

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ガスが流れる中を京極コース分岐へ向かう

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外輪山の奥にニセコ連峰を見て

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雲が漂い

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お目当てのオノエリンドウ、もちろんリンドウ科の花だが日本アルプス以外には羊蹄山にしか分布しない。ユウバリリンドウに良く似ているこの小さなリンドウを見るためには延々と登って来なければならない、しかも天気が悪いと花が平開しない。何とも罪な花?である。今回は花期としてはほぼ終盤、しかもやや雲に覆われた状況であったが、何とかカメラにおさめることが出来た。

オノエリンドウの写真を撮っていると、登山口で出会った神奈川から来られた男性がやって来た。「これがオノエリンドウですよ」「えっ、こんなに小さいんですか」と驚きながらカメラにおさめていた。外輪山を一周して来たとの事で、そのまま先に下山して行った。

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オノエリンドウ
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イワギキョウ

12時50分、私達は京極分岐から下り始めた。もちろん~登り同様の急斜面をどんどん下って行くことになる。しっかりと足元を確認しながら慎重に下って行く。とにかく、下る・・・下る・・・「たまに登りたいよ~」とおばさんが叫ぶ。急斜面の続く下りでは膝にかかるストレスは相当なものだ。

やっと4合目の標識を見てザックを下す。「大休止だぞっ」そう言って水分補給しながら汗を拭う。単独の男性が下って来た。「こんにちは」と声をかけると~「いやぁ~ここはまるで修行のような下りですね」比羅夫コースから登って来たそうだが、京極コースの状況を的確に表現なさっていた。「そうなんですよ~ここは静かなのが取り柄なんですけどね」。
そんな話しをしながら休んでいると、登りですれ違った単独の男性が下りてきた。手には登山道脇で回収したと思われるゴミやペットボトルなどが・・・「あっ、回収されたんですか?」「えぇ~結構見かけたものですから」話しを聞くと某省庁の関係で入山された人だった。今回の京極コースでは登山者が少ない割にはペットボトル等のゴミも見かけた。私達も若い頃には回収して下りたものだが・・・

羊蹄山の各コースについてとか~花の話しとかで20分ほどもその場で寛いだ。16時25分、登山口へ到着。「お疲れ~」車に乗り込んで京極温泉に直行した。
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コースタイム(含休憩時間)
登山口 05:50  5合目 07:55  9合目 10:50  山頂 11:20  外輪山散歩  京極分岐 12:50  5合目 14:40  登山口 16:25

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