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廃屋の屋根の上で一休みして、次は豊似岳の前衛峰とでも言うべき1088mピークを目指して稜線を進んで行くことになる。ここでのポイントは稜線の東側に張出した雪庇の状況である。十分に安定した雪庇と稜線を覆う締まった雪があれば最高だが、なかなかそうは行かない。今回は雪庇は安定していたものの、所々雪が途切れている部分があった。そして時々待ち受ける雪の踏み抜き、ズボッと足がまるまる入り込むこともあったようである。木々の根元近くを歩かずに、かと言って雪庇の縁に寄りすぎず、慎重に進んで行く。それでも今回は状況的には十分に恵まれていたと言えるだろう。

稜線を進み始めてほどなく、視界が開けて歓声が上がった。「綺麗だぁ~」「これだよね~」1088mピークから観音岳へと続く山並みが目の前にあった。遠くブルーの太平洋の水平線がほとんど青空と同化しており、、、それを背景に白い雪で所々縁取りされた山々のコントラストが見事に展開されたのだ。そんな光景を見ながらの稜線歩きは堪らない心地良さでもあった。

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所々雪の融けた稜線を進む

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1088mピーク

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観音岳

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稜線の東側に張出した雪庇上を進む
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鋭峰1088mピークがグングンと迫って来る。いつしかおばさんは先頭に立って歩いていた。行く手に張り出した危険な雪庇を交わそうと矮小化したダケカンバとハイマツの中へ入って行く。適当なところでまた雪庇上に戻って来る。何度も登っているからルート取りのコツはつかんでいるようだ。急斜面を慎重に歩を進め、登って来た稜線を振り返ると高度感のある光景が広がっていた。

「これってクマの足跡じゃない?」「そうだよ、こっちにもあるよ!」「大きいなぁ~こいつは」今日のものでは無いのだがしっかりと爪痕も見える大きなクマの足跡が稜線に続いていた。この山の山行では何度もクマの足跡や尻滑りした跡も見ている。一度は山頂目指して逃げり去るヒグマの姿も見ていた。奥深い山なのである。
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1088mピークが迫って来る

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危険な雪庇は交わして

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登って来た稜線を振り返ると高度感のある光景が広がった

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ヒグマの足跡

急斜面を登り終えて~ハイマツを交わして~1088mピークに立った。「見えてるよ~」「お~凄いぞ」先行する人達の声が聞こえて来た。私も足早に・・・いやっ、ハイマツに足をとられながらその声の方向に進む。

見えていた、期待通りの大展望がそこに広がっていたのである。前方には大きく翼を広げたようなおだやかな山容の豊似岳、そして遠くにはまだ真っ白な姿で連なる南日高の山々が浮かんでいた。次々とこのピークに立つ度に皆同様に雄叫びをあげた「素晴らしい~」「凄いぞ」。この瞬間があるからこそ苦しい登りにもめげずに登って来られるのだ。この瞬間、この達成感が山登りの魅力のひとつなのだろう。

1088mピークの到着時間は11時10分、稜線分岐から30分であった。

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ハイマツを交わして

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1088mピークに立つと大展望が・・・

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前方には翼を広げたようなおだやかな山容の豊似岳

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やはりこれ! 南日高の山々に圧倒される
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