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今年の夏山シーズンの目標は羅臼岳であった。世界遺産知床半島に位置する山であり、日本百名山でもある人気の山である。だから目標にした訳では無い。10年前に私達は山仲間と羅臼岳から硫黄山まで縦走した。あの苦しかった、美しかった、怖かった、、、そんな一コマ一コマの一部を(羅臼岳)もう一度顧みたかったからである。

前夜は木下小屋に泊まった、素泊まりのみ、一泊2000円である。狭いながらも5台ほどの駐車スペースがあるが、タイミングを逃すと手前のホテル下の道路脇にとめる事になる。早めにチェックインして露天風呂に入りながら〜早くも回顧モードに浸り始めた。表でお酒を少し飲みながら簡単な食事を済ませ、2階で早々と床に就いた。金曜日ではあったが10数名程度の宿泊客があった、ほとんど道外の方々かもしれない。久々の小屋泊と明日の山行に思いを馳せて、なかなか寝付かれない。結局ウトウトしながら朝を迎えてしまった。

5時頃にはもう登り始めている人達がいた。私達は幾分ゆっくりモード、2012年9月1日午前6時5分〜小屋横の登山口を出発した。すぐに急斜面を登って樹林帯に入る。先行するグループの後に続くが、静かなスタートである。

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登山道は尾根に上がるまで急斜面にジグを切りながら高度を上げて行く。足元にミヤマウズラを見つけてうれしくなってカメラを向ける。今回の山行は、時期的に言って花はほとんど期待していなかった。紅葉にもまだ早いし・・・あくまでも10年前の山行を思い出しながらゆっくりと登ろうと思っていた。

やがて尾根に出て、少し進むと熊出没多発区間の看板を見る。熊鈴チェック、声を張り上げながらオホーツク展望台に立つ。「まずは休憩だね」ザックを下し水分補給をする。
登山道の各ポイントには山頂までの距離が書かれた標識が立てられている。ペース配分の目安になるが、その距離を見て一喜一憂もする。今回のコースは距離にして約7km、標高差は1430mである。岩場さえ注意すればそれほど危険なところは無いが、距離と標高差からするとある程度の体力が必要となるだろう。

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ミヤマウズラ

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尾根に出る

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ヒグマ出没多発区間と書かれた標識

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岩塔のオホーツク展望台

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各ポイントにある標識

この日の天気は〜日射しの感じる高曇り、風は弱い。「わぁ〜〜〜綺麗よ〜」おばさんの声に視線を移す、知西別岳とその奥に尖った形で見える遠音別岳が印象的だ。650m岩峰を過ぎて淡々と尾根を進んで行く、見通しがきかないから結構たいくつな道程だ。次のチェックポイント弥三吉水には7時40分に到着(頂上まで4.3km)。ザックを下し冷たい水に手を伸ばす。

10年前の山行ではここで水を確保したため、ザックが一気に重くなり〜随分苦労したものだ。縦走では水の確保がポイントである。雪渓尻とか湧水は必ずとれるとは限らない。そのあたりの情報収集が出来るかどうかによっても担ぐ重さに違いも出るだろう。10年前には途中で下山して来る人からその貴重な情報を得ることが出来て大変助かった。

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知西別岳と奥に印象的な遠音別岳

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650m岩峰へ

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弥三吉水は左へ下りる

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貴重な水場

登山道脇にエゾクロクモソウを見つけた。久しぶりの花に?歓声をあげながらカメラを向けた。やがて極楽平に到着、前方には山頂部が薄い雲に覆われている羅臼岳が見えていた。「晴れるのかしら?」「大丈夫、まだ8時前だろう〜これから気温が上がって来ると晴れるよ、きっと・・・」段々と声を小さくしながら私は呟いた。地図を見る、極楽平を過ぎると急斜面が待っているようだ。

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エゾクロクモソウ

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極楽平、前方にちょっと霞む羅臼岳が見える

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