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2017年9月7日午前5時30分、大雪山黒岳ロープウェイの駐車場に到着。やや高曇り的な感じの空模様だったが、柔らかい朝の陽射しも感じられた。既に数台の車がとまっていてザックを担いだ人達が次々と駅舎に向かって行く。ただ想像していたほどの賑わいは全くない。私達もすぐに装備を整えて6時10分発のロープウェイに乗り込んだ。

ぐんぐん高度が上がって行く、眼下には雲海も感じられて~やがて前方に上川岳~黒岳のシルエットが見えて来た。高鳴る気持ちを抑えながらリフトに乗り継いで終点駅まで。そこにはニセイカウシュッペ山の美しいシルエットが待っていた。

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ニセイカウシュッペ山~平山のシルエット(リフト終点駅より)

午前6時50分、入山届けを記入して登山道へと進んで行く。

「ほら、やっぱりいい感じよ」色づき始めた木々の葉におばさんがさっそく声をあげた。今回のお目当てはもちろん紅葉である。毎年大雪山の紅葉最前線としてこの山域を訪れている。今年も日々層雲峡ビジターセンターの情報に注目していた。「紅葉にスイッチが入りました」との記述に目が留まり~「今年は早いぞ」と天気模様を見てすぐに飛んで来た?わけでもある。この山域の紅葉は毎年9月中旬以降に訪れていた。ただ2014年にはこの日と同じ9月7日に素晴らしい彩りを見ていた。果たしてその時以来となるのだろうか、期待が膨らむ。

登山道脇の色づきは高度が上がるにつれてその濃さを増して来た。くわえて、足元にはまだ咲いている山野草も見受けられる。それにしても・・・「静かだよね~」、同じロープウェイに乗り込んだのは私達も含めて数名ほど。「これからどんどん登って来るんじゃない」・・・しかしいつまでたってもポツポツと登山者の姿が目につく程度。「この山でこんなに静かなのは初めてだよね」、私達はそんな静けさを堪能するようにいつもよりも更にゆっくりと歩を進めた。
「おぅ~」眼下に広がって来る展望に歓声をあげる。屏風岳の山裾周辺を雲海が流れ込むように漂っていた。登山道脇に咲く花々にじっくりとカメラを向ける。

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屏風岳、奥に武華山と武利岳のシルエット。その裾野に流れ込むかのような雲海が美しい

「可愛いね~」「まだ咲いていたんだね」、エゾウサギギクがまるで小型のひまわりを感じさせるように咲き残っていた。ウメバチソウもあちこちでまだ見られた。ここでは変種エゾウメバチソウとすることもあるらしい。ミミコウモリはこの山域では「むかご」のついたコモチミミコウモリだ。この時期定番のミヤマアキノキリンソウ、そしてカラマツソウの果実があちこちで見られた。

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エゾウサギギク

ウメバチソウ

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コモチミミコウモリ

チシマアザミ

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ミヤマアキノキリンソウ

カラマツソウの果実

「そろそろだよっ」やがて前方にはマネキ岩が見えて来た。「綺麗だわぁ」その周辺はしっかりと色づき始めていた。ここは撮影ポイントにもなっていて、いつもなら多くの登山者が立ち止まる地点でもある。今回はゆっくりと撮影出来たが、その割には案外スンナリと通過した。今日の様子から言って下りでもゆっくりと撮影ができそうだったからでもある。

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前方にマネキ岩を見て

登山道脇に咲く花々に目を移そう。ナガバキタアザミはまだあちこちで咲いていた。チシマヒョウタンボクの果実はお見事のひと言。ヤマハハコがちょうど見頃でハイオトギリの紅葉と相まって咲き誇る。

ダイセツトリカブトがまだ綺麗に咲いていた。同じ高山系のトリカブトとしてはエゾノホソバトリカブトやヒダカトリカブト等があるが、その見分けは難しいようだ。花柄や雌しべに毛があるかどうか、またそれが屈毛なのか開出毛なのか・・・。そこまではほぼ観察していないがここで見られるのはダイセツトリカブトだろう。

「まだこんなに花が楽しめるなんて~」「何か得した気分だね」そう言いながら~私は何度も立ち止まりしゃがみ込みながらカメラを向けた。

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ナガバキタアザミ

イワギキョウ

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チシマヒョウタンボクの果実

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ヤマハハコ

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紅葉したハイオトギリとヤマハハコ

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ダイセツトリカブト
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花柄部分をトリミング画像で(開出毛が目立つ)

青空がどんどん広がってきて陽射しを受けた紅葉が一段と輝きを増して来た。振り返るとその奥にニセイカウシュッペ山が望まれる。「いいなぁ~これだよなぁ」そうつぶやきながら立ち止まる。まだ後続の登山者はポツポツと数えるほど・・・ゆっくりと咲く花々と紅葉、そして広がる展望を満喫しながらもうひと登り、黒岳山頂に立った、午前8時30分。登り始めてからなんと1時間40分も経過していた。しかしその時間の経過や登りの辛さは全く感じることは無かった。

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紅葉の奥にニセイカウシュッペ山を見る

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頂上へ向かってひと登り

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